住まい手のこえ

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高見さんの家

森のスープ屋
(Cinema Valley)


高見さんの家

< 家族構成 >
おばあちゃん、しげるさん、のりこさん、コウセイくん、チホちゃん、フジコ(猫)

おばあちゃんと孫の二世帯住居

元々、教員として働いていたしげるさんと美容師として働いていたのりこさん。
結婚後はしげるさん が祖母のブロッコリー農家を継ぐことになり、同時期にのりこさんも第一子目を妊娠。
おばあちゃんと孫一家の二世帯住居が始まったが、40年以上前に建てられた農家の古民家は若い世代にはなかなか厳しいものだった。 

おばあちゃんの家に孫家族が同居する3世帯住宅


「家の中は隙間だらけで、寒くて白い息が出た(笑)」というのりこさん。
だけど、おばあちゃんとおじいちゃんが建てた自慢の家を壊したくはない。
面影はそのままに、機能面を整えてくれる業者を探していた。

ピンときた出会い

お二人は早速、リフォームしてくれる見積もりを何箇所かに取ってみた。
が、手間の掛かる古民家のリフォームをまともに取り合ってくれた業者はたった2軒だけ。
リフォーム業者が手書きの平面図と説明文を出して提案してくれたが、
図面だけでは完成後の様子が想像ができなかった。
しらいし設 室はラフスケッチをプレゼンで見せてくれ、リフォーム後の空間のイメージが湧いた。
「素敵!ここ に頼みたい!」とピンときた。

設計士である白石さんとの打ち合わせはいつも和気あいあい

農家を軸にみんなが集える家に

古い古民家は、農作業を終えると長靴のまま土間で野菜を洗ったり洗濯ができる、
農家にとっては機能的なつくりをしているが、生活するには使いにくい箇所も多い。
水回りが土間にあったり、各部屋 が引き戸で仕切られ、暗くて寒い。

依頼を受けたしらいし設計室では、家の中で一番暗かった北側の2つの6畳間を取っ払いリビングにした。
北側の大きな開口と南の縁側とでリビングをサンドイッチすると、一日中優しい光が差し込む。

木の床に座りこんでの日向ぼっこが気持ちいい

お客さんの多い高見さん家族。南側の和室はリビングからつながった空間にすることで、
人がたくさん集えるようにした。

リビングと和室がつながった開放的な空間

高見家のある鳥取県大山町は、冬には多い時で1mもの雪が積もる豪雪地帯。
床下・壁・天井にに断熱材を敷きつめ、薪ストーブを入れて機能面もアップさせると、
家は安心して暮らせる空間に変わった。
ただ、これまでもこれからも、農家の生活に寄り添う土間は残し、
土の付いた作業着等の簡単な洗い物はそこで済ますことができる。 

家で働くライフスタイル

美容師の仕事が大好きだったのりこさん。
出産したら半年で復帰を考えていたものの、赤ちゃんの時期はたった一瞬。
この時間をもっと大切にしたいと、家で働く選択をした。
真っ先にしらいし設計室に相談。
客間として使っていた8畳間をお店にする予算は限られていたため、
こだわる部分はこだわって、使えるものは使おう。
方針が決まった。

客間だった8畳がこだわりの美容室に

空間のポイントとなる壁紙や入口や洗面台まわりのタイルは、
のりこさん好みのものを採用する一方、 床も天井はそのままの状態を残した。
高見さんのお父さんが昔、技術の授業でつくった棚も味のある什器にリノベーションされ、
雰囲気づくりに一役買っている。

リノベーションした棚には美容プロダクトから絵本までが並ぶ

のりこさんこだわりのレトロなタイル

「イメージを伝えると、予算の中で出来る方法を一緒に考えてくださる。
もちろん、ダメなものはダ メって言われるけど、今思えば白石さんの提案で納得しています。」

のりこさんにとって、美容室を訪ねてくれるお客さんとの時間も
子育ての合間の大切なひとときだ。

自宅サロンでゆっくりと接客できるのが楽しい
かかりつけ医みたいな設計室

「白石さんは、家づくりを一緒にするパートナーなみたいな感じの存在です。
家のことってなったらとりあえず白石さんに連絡してみよう!って」
しげるさんが笑いながら言う。

「設計士は美容師と似てると思います。」そう話してくださったのは、のりこさん。
初めはどんな人 か分からないから、仕事や好きなもの、日々のお手入れやライフスタイル・・・
なんでもないことを 聞いてお客さんのことを知っていく。

「そうすることで希望に近づき、満足してもらえるようになるなって。
だから私たちも、白石さんには飾らない本当の姿を見せたいと思っています。」


< しらいし設計室 白石より>
高見さんの家では、おじいいちゃんおばあちゃんが農業して建てた家をお孫さんが受け継いで「家で 働く」というライフスタイルを作られています。
家も人も、年月とともに変化していくもの。必要になったら、少しずつで良いから予算に合わせて家も直していけば良い。それが新築ではないリノベーション建築の良さだと思っています。
家のことをどんな小さなことでも相談できる、かかりつけ医みたいな設計屋。
しらいし設計室はそんな存在でありたい。

<高見さんの家>
構造:在来工法
改修面積:1F 87.32m² 、2F 6.81m²、延94.13m²(28.47?) 竣工日:2016年7月


森のスープ屋さん

<家族構成>
ビリーさん、かずえさん

森のスープ屋さんは大山の静かな森の中に佇む、絵本の中に登場しそうな木の建物。
オーナーのかずえさんの頭にの中にあった世界を具現化したお店です。

森の小道がお店の玄関へ続くアプローチ
森の中の教会のような素朴であたたかい空間

二十代の頃マイホームを建てた経験のあるかずえさん。
当時依頼したハウスメーカーには、欠けたレ ンガや、
木目タイルを使いたいと希望を伝えたが、
カタログにないものは使えないと家づくりの希望 をことごとく却下されてしまった。
大手ではできないお店づくりがあることを知り、
設計士選びには 少しナイーブになっていた。

足場板は長年憧れてやっと使うことができた床材

ところが、しらいし設計室との最初の打ち合わせの時、かずえさんはびっくりしてしまう。
自前のスクラップブックを持参して、
お店を建てるずっと前から集めた写真や書きためたスケッチを設計士に見せ、
お店のイメージを伝えようとしたところ、
白石さんは「むずかしくておもしろ いですね。やってみましょう。」と言ってくれた。「涙が出そうだった」と当時を思い出すかずえさ ん。

イメージスケッチや写真も大切に取ってある

担当の遠藤さんは「日常の良さのひとつひとつの気付いてもらいたい」というかずえさんの思いを ひとつひとつ具現化していくことになった。
太陽が昇ってきた朝の神々しさや、
雨上がりに木の葉についた雨粒に光が当たってキラキラ光ること・・・。
かずえさんが感動した瞬間を感じてもらう空間にするため、
窓の位置は細かい単位で調整 をおこなった。

窓から見える景色をぼんやりと眺めるのは至福の時間

森のスープの入り口は、道路側ではなく森の方を向いている。
店内に入り、道路側の「背中」に背を 当てて座ると、
目の前にはエネルギーにあふれた森が広がるのだ。

働くお二人の佇まいも、このお店を織り成す要素のひとつ

客席からは、キッチンに立ちテキパキと仕事をするお二人の姿や、
木漏れ日が差し込むドアが見える。
そんな、お店の「横顔」の美しさは色っぽさも感じられるほどだ。

光と影のコントラストが美しいお店の「横顔」

クロモジの植生やはちみつの巣箱、雑貨を扱う小さな小屋がある森のスープやの敷地内。
新たに建設中なのは、『森のスープ屋の夜』という一日一組限定の宿。
https://cinemavalley.net

森の中に生まれつつある小さな小さな宿

「自分の家にお招きするように森の日常を感じてもらう、
暮らしのおすそわけがしたいんです。」

宿 やかずえさんの長年の夢。
イメージがまたひとつ、形になりつつある。

設計士はそれぞれの暮らしにそっと寄り添う存在でありたい

< しらいし設計室 遠藤より>
ゆるやかな坂道を下って行ったその先に、この森は広がっている。
コナラやクロモジをはじめいろんな木々が伸びやかに生えるこの土地自体も、 向こう側へとゆるやかに下っている。
その周縁は崖になっているが、生い茂る草木にはばまれて眼下は見通せない。 耳をすませば聞こえてくるほんのかすかな水音が見えない谷の気配を伝え、その深さをかきたててくれる。
勾配のある土地には、ちょっと歩きたくなる魅力がある。
見上げたり、見下ろしたり、角度によって変化のある景色がある。
落ち葉や枯れ枝が敷きつめられた地面は、歩くとちょっとふんわりしている。ふと見通せば、木々が織りなす光と陰で場に明暗が息づいている。
それが自然と歩む道を、腰を下ろしたくなる居場所を導いてくれるような気がする。
決して広大な土地でもなく、大きな景色に開かれているわけでもないけれど、どこかおだやかで親しみと奥行きのある小さな森…。
この森の手前、中ほどにこの小屋は横たわっている。木々の間を縫うように、森をくぐり抜けてアプローチ。
切妻屋根がかかった細長い木箱のような建物が静かに谷の方に向いて構えている。
小屋の中に入ると粗削りの板を張った空間に包まれる。そこに開かれた窓から外を眺めると、新たな視点で新たな森と出会う。
そして、あらためてこの森に包まれていることを知る。
やがて時を経て古びつつも、日々刻々と移ろいゆくこの森の季節や時間を変わらず映し出してくれる… そんなかけがえのない建築、人の居場所であればよいと思う。

<森のスープ屋> 1F:32.76m² ロフト:15.79m² 竣工日:2016年9月
<森のスープ屋の夜(宿泊小屋+風呂棟)>
1F:12.10m²(6.42m²) 建:16.94m²(6.42m²) ロフト:7.56m² 竣工日:2019年7月